腰に負荷をかけることによって発症する腰椎椎間板ヘルニアですが、その多くが適正な治療を受けることで改善されたり、しばらくすると症状が自然消滅するのですが、同じ腰椎椎間板ヘルニアでも、そのまま放っておくと危険なタイプのものがあります。
そもそも腰椎椎間板ヘルニアって何?という部分から、馬尾型腰椎椎間板ヘルニアという、放っておくと危険な腰痛について、これから詳しく解説していきます。
腰椎椎間板ヘルニアってどんな病気?
ヒトの腰には腰椎という5つの骨があります。その5つの骨と骨の間には、椎間板というクッションのようなものが交互に組み合わされています。
椎間板は髄核というゼリー状の組織の周りを線維輪という線維組織で囲まれてできています。
椎間板とはもともと血管が乏しく、4歳から5歳になる頃までには血流がなくなるような組織です。
このような早い段階から変性する椎間板に加齢や運動、外傷などで負担がかかることによって線維輪に亀裂が生じたことから飛び出した髄核が、神経根や脊髄、そして脊髄馬尾を圧迫した状態のことを腰椎椎間板ヘルニアと言います。
腰椎椎間板ヘルニアの2つのタイプ
腰椎椎間板ヘルニアには、神経根型と馬尾型の2つのタイプがありますが、圧迫される神経がどちらなのかによっても危険度が違います。
神経根型の腰椎椎間板ヘルニアは、脊柱管を縦の方向に通っている神経から左右に枝分かれして伸びる神経根が圧迫されているケースのもので、腰から足にかけて痛みやしびれの症状が現れます。
神経根型の腰椎椎間板ヘルニアの危険度は高くありませんが、馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの場合は、危険度が高くなり、緊急手術が必要になります。
次の章で馬尾型腰椎椎間板ヘルニアについて深く掘り下げていきます。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアとは
脊椎の中には脊柱管という、パイプ状で神経が通っていている道のようなものがあって、1本の脊髄とその脊髄から分かれた31の脊髄神経根の束が包まれています。
脊髄は第1腰椎から第2腰椎の高さで終わっているのですが、脊髄神経根は、脊髄の下から下肢へ延びて、しばらく脊柱管内を走った後にそれぞれの高さから分かれています。
その神経の束が、馬の尻尾みたいに見えることから馬尾という名称が付けられています。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアとは、馬尾全体が何かの原因によって圧迫されて発生する、腰から脚にかけての痛みやしびれ、足の運動麻痺や、性機能障害や排尿・排便障害などの重い神経症状のことを言います。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの原因としては主に大きな椎間板ヘルニアや高度の腰部脊柱管狭窄症、脊髄・脊椎の腫瘍、細菌の艦船や硬膜外血種、外傷などが挙げられます。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの症状
腰からお尻、足にかけて痛みがしびれがある場合、下の症状に1つでも当てはまれば馬尾型腰椎椎間板ヘルニアである可能性が高くなります。
下の表からチェックしてみましょう。
- 痛みはないがしびれがある
- お尻の周りがほてっている
- お尻の周りがしびれている
- 足の両方が痛かったりしびれたりする
- 両方の足の裏側がしびれる
- 歩くと尿意を感じる
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの場合、放っておくと排尿障害と言って尿漏れや頻尿などが起こり、それが進行すると歩くのが困難になって、寝たきりになることもあるので、馬尾型腰椎椎間板ヘルニアかなと思ったら少しでも早く医療機関を受診しましょう。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの診断
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの診断は、次の6つの方法で行われます。
- 問診
- 神経学的検査
- 膀胱機能
- MRI
- 内臓疾患の有無
- 血液検査
問診では、強い腰痛や足の痛みがあるか、足の感覚が鈍くないか、足の力が弱かったり、尿が出ないかを確かめ、神経学的検査では、知覚テストと筋力テストが行われます。
また、転移性腫瘍が原因と疑われる場合には、内臓疾患の有無や血液検査が行われます。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの治療
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアだということがわかったら、緊急的な治療が行われます。
まず、ステロイド薬を投与して、馬尾の腫れを減らすことがあります。
特に馬尾型腰椎椎間板ヘルニアは、1日経過すると、神経症状が回復不良となるので、緊急的に手術をする必要があります。
馬尾型腰椎椎間板ヘルニアが発症してから2日以上後の手術だと、運動障害や感覚障害、そして排尿障害の回復に差が出ることがあります。
まとめ
ここまで、腰椎椎間板ヘルニアについて下の6つのことをお話してきました。
- 腰椎椎間板ヘルニアってどんな病気?
- 腰椎椎間板ヘルニアの2つのタイプ
- 馬尾型腰椎椎間板ヘルニアとは
- 馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの症状
- 馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの診断
- 馬尾型腰椎椎間板ヘルニアの治療
同じ腰椎椎間板ヘルニアという病名でも、神経根型と馬尾型とでの違いでも、異なる部分があって、特に馬尾型腰椎椎間板ヘルニアを放置しておくと、歩行困難になって、将来寝たきりになる危険性があることがわかりました。
腰から足に痛みやしびれが起きたときには、なるべく早く医療機関を受診することをおすすめします。