腰椎椎間板ヘルニアの症状で、太ももが痛くなったことを訴えて病院へこられる患者さんがいます。
そのツライ痛みやしびれが生じる腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気なのか、原因や、治療法、そして腰椎椎間板ヘルニアのセルフチェックや、セルフケアなどをこの記事でご紹介していきます。
腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?
腰の部分の骨と骨の間には、椎間板というクッションのようなものが挟まれています。
椎間板は、中心に髄核というゼリー状のものがあって、その周りを線維輪というバームクーヘン状のもので囲まれてできています。
椎間板の線維輪に亀裂が入って髄核が外へ飛び出した状態を、腰椎椎間板ヘルニアといいます。
飛び出したヘルニアが神経を圧迫することで、腰からお尻、太ももに膝、そしてふくらはぎや足に痛みやしびれが起こります。
腰椎椎間板ヘルニアになる4つの原因
腰椎椎間板ヘルニアになる原因は主に次の4つです。
- 悪い姿勢での動作
- 喫煙
- 加齢
- 遺伝
悪い姿勢での動作や、喫煙によって椎間板が変性することが原因で、椎間板の線維輪に亀裂が入り、腰椎椎間板ヘルニアが発症することが多いです。
また、遺伝が原因になることも珍しくはなく、親子で発症することもあります。
腰椎椎間板ヘルニアの症状 │太ももが痛くなるのはどの椎間板?
腰椎椎間板ヘルニアが原因の腰痛は、どの部分の椎間板に異常をきたして
神経を圧迫しているかによって症状が異なります。
腰椎は、上から第1腰椎から第5腰椎まで5つあります。
腰椎の間にある椎間板は英語でLumbarと呼び、その頭文字のLを使って、例えば第腰椎と第2腰椎の間の椎間板であったらL1/2と呼んで、第3腰椎と第4腰椎の椎間板のことは、L3/4と呼びます。
そして、第5腰椎と仙骨の間に挟まれている椎間板は、仙骨を英語でSacrumと呼び、その頭文字のSをとってL5/Sと呼びます。
その中でも、ふとももに痛みやしびれが生じるのは、L3/4の腰椎椎間板ヘルニアとL4/5の腰椎椎間板ヘルニア、そして、L5/Sの腰椎椎間板ヘルニアです。
L3/4の腰椎椎間板ヘルニアの場合の症状は、太ももの前部分が痛くなったり、だるくなったり、時にはしびれが生じたりします。
そして、L4/5の腰椎椎間板ヘルニアが特に腰痛の原因で多く見られます。
下にある骨になるほど重力がかかり、腰を曲げるのがこのL4/5の部分であるので、圧力がかかるので、痛みが生じやすいのです。
痛みの症状は、お尻から太ももの横の部分と、膝の下や外側の脛に痛みやしびれが生じて、親指に力が入らなかったり、足首を上へ上げることが出来なくなります。
L5/Sの腰椎椎間板ヘルニアになると、お尻の真ん中や太ももの裏、ふくらはぎやかかとから足の裏、そして足の小指が痛んだりしびれたりします。
そしてアキレス腱の反射が弱くなることで、つま先歩きができなくなるなどの症状が現れます。ただ、人によっては腰椎椎間板ヘルニアであっても、その症状が出ない場合もあります。
そのままにしておくと、症状が悪化することもありますので、医療機関を受診しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの7割は3ヶ月以内に改善する
腰椎椎間板ヘルニアになっても、その約7割は、3ヶ月以内に痛みやしびれの症状は自然に消失します。
なので、腰椎椎間板の症状が出てからも3ヶ月以内の間は、特別な場合以外は手術は行わないで、薬物療法などで様子を見ることが多いです。
腰椎椎間板ヘルニアで麻痺症状になると緊急手術が必要
しかし、次の2つのような場合には、緊急手術が必要になります。
- 足の動きの悪化
- 排尿障害の発生
このような場合には、手術を行うことが可能な医療機関をできるだけ早く受診することをおすすめします。
腰椎椎間板ヘルニアの保存治療
急いで手術を行う必要がない場合は、保存治療が行われ、薬物療法やブロック療法を行います。
ブロック療法には2種類あって、
- 痛みやしびれがある部分や神経の通り道に注射する
- 直接神経に注射を行う神経根ブロック
というものがあります。
薬物療法やブロック療法を試しても効果がない場合のみに、神経根ブロックを行い、特別ない理由がない場合は、手術を行うことはありません。
腰椎椎間板ヘルニアのセルフチェック
ここで、腰椎椎間板ヘルニアの簡単なセルフチェック法をご紹介します。
あお向けになって膝を伸ばした状態のまま片足を上げます。
腰椎椎間板ヘルニアの場合は、20~30度上げただけで痛みが生じ、それ以上は上がりません。
これは「下肢伸展挙上テスト」というのですが、まれに90度くらい足が上がる場合でもMRIで検査してみたら腰椎椎間板ヘルニアだったということもありますので、あくまで目安として参考にしながらも、医療機関で調べてもらうことが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアのセルフケア
腰椎椎間板ヘルニアの治療には、保存治療と手術治療があることは、先ほどお話してきましたが、保存治療や手術治療の土台となるのが、セルフケアです。
病院で治療を受けても、普段から腰に負担をかけたり姿勢が悪かったりしていたら、腰椎椎間板ヘルニアの症状はよくなりません。
ここでは、簡単にできてすぐ始められるセルフケアの方法をご紹介します。
椅子を使う股関節のストレッチ
長時間パソコン作業などのデスクワークで、ずっと同じ姿勢を撮り続けることが、腰椎椎間板ヘルニアの悪化の原因になります。
作業の合間に時々、股関節のストレッチを行うことで、下半身の筋肉の緊張が和らぎ、血流も良くなることで、腰椎椎間板ヘルニアの痛みやしびれの症状が楽になります。
ここでは、椅子に座った状態で簡単にできるストレッチ法をご紹介します。
- 背もたれのある椅子に深く腰掛ける
- 両方の膝をしっかりと開いて、膝に手を当てる
- 胸を張るような姿勢で、ゆっくりと太ももの内側の筋肉を伸ばす
膝に手を置いて添えるようにするのは、腰の負担を軽減させるためです。
姿勢は常にS字カーブで
横から見たときの背中が、自然なS字カーブを保っているのが良い姿勢です。
S字カーブが崩れると、腰椎に負担がかかることで、腰椎椎間板ヘルニアの痛みやしびれの悪化につながります。
そして、腰椎椎間板ヘルニアの人は猫背にならないように注意することを心がけてください。
腰椎椎間板ヘルニアの予防や療養の6つのポイント
腰椎椎間板ヘルニアにならないために心がけてほしいことは、次の6つです。
- 腹筋や背筋を鍛えるために腰痛体操をする
- 腰に強く負担をかけない
- 適度な運動を普段から心がける
- 腰椎椎間板ヘルニアになったら、安静にして、持続牽引・薬物療法・ブロック療法を受ける
- その後、温熱療法や間欠的牽引・腰痛体操やコルセットを付ける
- それでも症状が改善されないようなら手術治療を検討する
腰椎椎間板ヘルニアになって、症状がひどいうちは、安静にして椎間板に負担がかからないようにすることが大切です。
その際、持続牽引といって、骨盤にベルトを着けて下の方向へ引っ張る方法と薬物治療を併せておこなって痛みや炎症を鎮めます。
痛みやしびれの症状がひどいときには、神経根ブロックを行います。
このようにしながら1~2週間様子を見て、症状がなくなったら、次は、間欠的牽引や温熱療法、腰痛体操やコルセットを付けたりするなどして、少しずつ日常生活に戻れるようにします。
これらのことをしても症状が収まらないようであれば、手術治療をすることもあります。
腰椎椎間板ヘルニアを予防するためには、普段から運動を適度にすることと、腹筋や背筋を鍛える腰痛体操をすること、腰に負担をかけないように気を付けることが大切です。
まとめ
これまで腰椎椎間板ヘルニアについて次の11個のことをお話してきました。
- 腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?
- 腰椎椎間板ヘルニアになる4つの原因
- 腰椎椎間板ヘルニアの症状 │太ももが痛くなるのはL3/4とL4/5の椎間板
- 腰椎椎間板ヘルニアの7割は3ヶ月以内に改善する
- 腰椎椎間板ヘルニアで麻痺症状になると緊急手術が必要
- 腰椎椎間板ヘルニアの保存治療
- 腰椎椎間板ヘルニアのセルフチェック
- 腰椎椎間板ヘルニアのセルフケア
- 椅子を使う股関節のストレッチ
- 姿勢は常にS字カーブで
- 腰椎椎間板ヘルニアの予防や療養の6つのポイント
腰椎椎間板ヘルニアの症状の中でも、ふとももの痛みにフォーカスしてお話してきました。
もし、腰や太ももに、これまでお話してきたような症状が現れたと感じるようであれば、早く医療機関を受診しましょう。