腰椎椎間板ヘルニアには高齢者もなることがある!?その特徴と診断法

 

腰椎椎間板ヘルニアは青壮年期の若い人に多い特徴がありますが、実は高齢者でも生じることがあることを知っていましたか?

 

この記事では、高齢者と青壮年の腰椎椎間板ヘルニアの違いや特徴、診断方法について、少し難しくなりますが、解説していきます。

腰椎椎間板ヘルニアってなに?

 

そもそも腰椎椎間板ヘルニアというのはどんな病気なのかを解説します。

 

人の腰には、腰の骨と骨をつないでいる軟骨があって、それを椎間板と言います。

 

その椎間板の後ろに脊柱管という神経を入れてある管があるのですが、その脊柱管のほうへ椎間板という軟骨がはみ出して神経を圧迫させて痛みが生じる病気のことを、腰椎椎間板ヘルニアと言います。

 

そして、腰の神経は、脚全体に張り巡らされているので、ヘルニアが神経を圧迫することで、腰から足の特定の部分に痛みやしびれを生じさせるのですが、その痛みやしびれが生じる場所は、神経の圧迫を受けた支配領域と一致します。

 

腰椎椎間板ヘルニアで一番多いのは、第4腰椎と第5腰椎の間に発生したヘルニアなのですが、その場合、第5腰神経が支配している領域に痛みとしびれが生じます。

 

そして、腰椎椎間板ヘルニアで次に多いのが、第5腰椎と第1仙骨間に発生ししたヘルニアで、その多くは、第1仙骨神経が支配している領域に痛みやしびれが生じます。

 

腰椎椎間板ヘルニアの症状が進行すると、痛みやしびれだけではなく、触った感覚が鈍くなる知覚障害の症状が生じたり、脚に力が入らないという筋力低下やまた、おしっこが出にくくなる排尿障害が起こることもあります。そして、足首や足の親を上にあげることが難しくなる症状が起こることもあります。

 

腰椎椎間板ヘルニアの主な3つの症状

 

腰椎椎間板ヘルニアとは、腰や脚が痛くなる坐骨神経痛という症状がよく見られるのですが、主に次の3つのような症状があると、腰椎椎間板ヘルニアである可能性が高いです。

 

  1. ある日突然腰や足が痛くなった
  2. 重心をかけると患部の痛みがしびれがひどくなる
  3. しびれや痛みがずっと続く

 

それに加えて、尿意が感じなかったり頑固な便秘などが生じる膀胱直腸障害や、足首をそらせないなどの麻痺症状が起こることも稀にあります。

 

高齢者と青壮年の腰椎椎間板ヘルニアの違い

 

腰椎椎間板ヘルニアは、脊柱管のほうへ椎間板という軟骨がはみ出して神経を圧迫させて痛みが生じると解説しましたが、もう少し詳しく説明して、更に青壮年層と高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの違いについて解説します。

 

椎間板は線維輪という例えればバームクーヘンみたいなものの中に、髄核というゼリー状のようなものが包まれているのですが、線維輪に裂け目が生じて、髄核が脊柱管内に飛び出すことによって神経が圧迫されて、腰椎椎間板ヘルニアの症状が発生します。

 

ところが高齢者の場合は、青壮年層よりも椎間板変性が進んでいて、高齢者には、青壮年のヘルニアみたいな髄核成分はありません。

 

60歳以上の高齢者の手術で摘出した腰椎椎間板ヘルニアの29標本を組織学的に調べたところ、29標本の中の21に線維輪と軟骨終板が認められました。

 

つまり、高齢者の腰椎椎間板ヘルニアでは、椎間板の変性が青壮年層よりも進んでいて、椎体からはがれた軟骨終板が、線維輪と一緒にヘルニアの塊となること特徴であるということが認められました。

 

また、高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの患者の手術を行った例のおよそ88%では、椎間板腔の狭小化が認められず、椎間可動性が保たれていることが多いという調査結果が出ました。

腰椎椎間板ヘルニアの検査方法

 

腰椎椎間板ヘルニアの検査では、問診と診察がとても重要になります。

問診の際には、先に説明した通り、

 

  1. ある日突然腰が足が痛くなった
  2. 重心をかけると患部の痛みがしびれがひどくなる
  3. しびれや痛みがずっと続く

 

という特徴が出てくると、腰椎椎間板ヘルニアである可能性が高くなります。

 

そして、診察では、触覚、筋力、反射の検査をします。

 

触覚や筋力は自覚症状がなかった場合でも診察を受けることで明らかになることも多いです。

 

また、膝を伸ばした状態で足を持ち上げようとする際に伝激痛が脚に走る症状が確認されると、腰椎椎間板ヘルニアである可能性が更に高まります。

 

これらの問診と診察を終えると、MRI検査を行います。

 

MRIでは、椎間板の変性やヘルニアの場所、そして神経の状態を調べることができて、それが問診や診察と一致すると、腰椎椎間板ヘルニアであることが確定されます。

 

また、外側ヘルニアという、通常とは違う部分にヘルニアが現れることが稀にあり、それもMRIで確認することができます。

 

MRIで外側ヘルニアである可能性がある場合や、ヘルニアが小さくてMRIで診断されにくい場合には、椎間板造影検査や、脊髄造営検査を行うことで、腰椎椎間板ヘルニアであるという診断を確定することもあります。

高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断方法

 

高齢者の腰椎椎間板ヘルニアは、発生することはごく稀ですが、椎間板の膨隆による脊柱管狭窄症とは病気の種類が違います。

 

ヘルニアの塊には線維輪や軟骨終板が多いという特徴は、青壮年期の若い年齢の腰椎椎間板ヘルニアとは違うものです。

青壮年期の腰椎椎間板ヘルニアと比べてみると、テンションサイン(膝を伸ばして足を持ち上げようとすると脚に伝激痛が走る症状)の陽性率は低くて、また、下肢の筋力低下などの神経症状は強いことが多く見受けられます。

 

しかし、脊柱管狭窄症と比べてみると、テンションサインの陽性率が高くて、間欠跛行の頻度は低く見受けらるところから、今現在までのところは、問診や検査、MRIなどの検査だけで、腰椎椎間板ヘルニアと確定するのは難しいのが現状であり、手術によって確定診断が行われるのが現状です。

 

そして手術によっても確定しないこともあり、そのような場合には、症状や所見、画像検査結果を詳しく記載するだけで、確かな根拠がない場合は、腰椎椎間板ヘルニアと診断するのは限定的にするのが主流となっています。

まとめ

 

この記事では、次の5つのことについて解説してきました。

  1. 腰椎椎間板ヘルニアってなに?
  2. 腰椎椎間板ヘルニアの主な3つの症状
  3. 高齢者と青壮年の腰椎椎間板ヘルニアの違い
  4. 腰椎椎間板ヘルニアの検査方法
  5. 高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断方法

 

高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの患者は珍しく、診断の際などわからない部分もあり、今後の課題になっています。

 

この記事が腰椎椎間板ヘルニアになった高齢の方のお役に少しでも立てば幸いです。